傘には特別な思いがあります。
若い頃、土砂降りの中を傘も持たずの営業回り、会う人会う人からの冷たい言葉に傷つき涙を堪えた日がありました。周りに言わせれば、冴えない日なんてよくあることなのかもしれません。
それでも、そんな時に気遣い声をかけてくれた見知らぬ女性が「がんばって!これはあなたにあげる」と躊躇なく差し出してくれたかわいいピンク色の傘に、どれだけ心が救われたか計り知れません。
あの一本の傘が、困っている人や悩んでいる人の前で立ち止まって「大丈夫ですか?」と声をかけることの大切さに気づかせてくれたのです。
より良い世界を望むなら、
もしも、より良い福祉、より良い社会、より良い世界を望むのであれば、誰もが、ひとつの傘を目の前の人に差し出せるくらいの心づもりでいる。
それだけのことでガラリと世の中は変わるのだと確信しています。
私たちにできること。
それは、どこに居ても、どんな仕事をしていてもできることです。
たとえば私たちの今の仕事は「老人ホームを紹介する」ということ。
立派な施設を運営しているわけでも、宿舎を提供できるわけでもないのですが、在宅での生活が困難な方へ、安心して住まう場所にお連れするまでの間を、私たちが傘を差してお供することができれば幸せです。 −高野−